日比谷図書文化館で開催中の「ルドゥーテ展」に行ってきました。
ピエール・ジョセフ・ルドゥーテはボタニカルアート(植物画)の頂点を極めた画家として知ってはいたものの、今まで作品を生で見る機会がなかったので、今回の展示は楽しみにしていました。
今回の展示ではルドゥーテの代表作「薔薇図譜」から170点と、肉筆画2点が公開されています。
ルドゥーテの植物画の魅力は、ただ写実的に植物描いただけではなく、1枚の作品として美しい構成美にあると思っています。
展示でも「ドレスを纏った貴婦人のよう」と表現されていましたが、花の姿を美しく見せるための配置や構図が本当に見事です。単に植物の形状を正確に描いたのではなく、あくまで1枚の作品として完成させている点が、従来の植物図鑑とは一線を画しています。
また、パンフレットなど一般用に印刷された作品を見たときも繊細だとは思っていましたが、実物はその比ではありませんでした。予想はしていましたが、描写の細かさにはやはり驚かされました。
銅版画の技法を用いて描かれた薔薇は、花びらの微妙なグラデーション、葉の葉脈、そして蕾の表面に生えた細かな繊毛に至るまで、恐ろしいくらい細かく描写されています。
一本の薔薇をここまで丁寧に描くというのは、想像するだけでも気の遠くなるような作業ですが、それでも一切の妥協なく描写され、もはや執念すら感じさせてくれるのが、ルドゥーテのすごさだと思います。細密描写なんか執念がないとやってられないと個人的に思っているのでひたすら圧巻でした。
よく美術展(特に西洋美術)は歴史や宗教の知識がないと楽しめないと思われがちですが(自分調べ)、この展示に関しては、そんな心配は一切不要です。ただただ、美しさや細かさに圧倒されるだけで充分に楽しめるタイプの展示だと思います。
細密描写が好きな方にはぜひ足を運んでほしい展示でした。