MeCabとは何か
MeCab(メカブ)は、日本語の文章を「形態素 morpheme(単語に近いまとまりのこと)」へ分解し、品詞などの情報も付与できる形態素解析エンジンです。日本語は単語の区切りがスペースで表現されないため、文章を機械的に扱う前に分割する工程が重要になります。MeCabはその入口を担う代表的なツールとして、多くのテキスト処理で使われています。
GoogleソフトウェアエンジニアでGoogle 日本語入力開発者の一人である工藤拓によって開発されており、開発者の好物「めかぶ」から命名されました。
形態素解析でできること
形態素解析を行うと、文章が単語単位に分割されるだけでなく、名詞・動詞・形容詞といった品詞情報も得られます。これにより、単語の出現頻度を数えたり、名詞だけを抽出したり、動詞の活用を原形にそろえたりといった処理がしやすくなります。文章を「コンピュータが扱えるデータ」に変換するための工程といえます。
分かち書きの基本
MeCabの代表的な使い方が分かち書きです。分かち書きは、文章を単語ごとに区切ってスペースで並べる形式で、たとえば「今日は良い天気です。」を分かち書きすると、「今日 は 良い 天気 です 。」のような形になり、単語ごとの集計やフィルタリングを素直に実装できます。
MeCabは分割結果に加えて品詞情報も返せるため、必要な語だけを取り出す処理に向きます。たとえば名詞だけを集めて重要語の候補を作ったり、助詞や記号を除外してノイズを減らしたりできます。単語を単に並べるだけでは得られない「言葉の役割」を扱える点が、形態素解析の強みです。
辞書による精度の違い
解析結果は辞書に強く依存します。同じ文章でも、辞書の種類や設定によって分割のしかたや品詞判定が変わることがあります。一般的な辞書でも十分なケースは多い一方、固有名詞や新しい言葉が多い文章では、辞書の選択やユーザー辞書の追加で結果が安定しやすくなります。目的に合わせて辞書を調整できるのもMeCabの特徴です。
MeCabのドキュメントに記載されている辞書は以下の3つです。
- IPA辞書(mecab-ipadic)
- Juman辞書
- Unidic辞書
MeCabでよく使われる定番の辞書は、IPA辞書です。これは、もともと形態素解析エンジン ChaSen に含まれていた ipadic をベースに、MeCab向けに調整・改良された辞書です。
導入時の注意点
導入時に多いのは、文字コードの扱いが合わずに文字化けするといった問題です。特に実行環境によって標準入出力のエンコーディングが異なる場合があるため、設定(mecabrc)や入出力の文字コードを揃える意識が必要になります。最初は短い文章で動作確認し、期待した分割が得られるかを確かめるのがおすすめです。





